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ジョージ・ハリスン生誕80周年記念 劇場特別版公開

ジョージ・ハリスンの音楽と人生を称え、盟友エリック・クラプトンが開催した歴史的一夜。
感動と慈愛あふれる伝説のトリビュート・コンサート映画が
ジョージ生誕80周年の今年、初めて劇場の大スクリーンに蘇る!

10/21(土)開催 オノ セイゲン presents「オーディオルーム 新文芸坐」

トークイベントレポートが到着!

2023/10/21(土)、極上の音響空間で映画を楽しめる“オノ セイゲン presents「オーディオルーム 新文芸坐」” で『コンサート・フォー・ジョージ』のワンナイト上映が開催されました。上映後には実はジョージ・ファンで、1975年のエリック・クラプトンの全国ツアーでオープニング・アクトを務められたというミュージシャンの久保田麻琴さんと、音を調整されたマスタリング・エンジニアのオノセイゲンさんのトークショーが行われました。

司会進行は新文芸坐支配人の花俟良王さん。途中、久保田麻琴さんのご友人でビートルズに詳しいカメラマンの井上ジェイさんが飛び入り参加し、ジョージ談義には花が咲きました。

トーク中の様子.jpg

トークゲスト:久保田麻琴さん(以下久保田)オノ セイゲンさん(以下オノ)

司会進行:花俟良王さん(以下花俟) 飛び入りゲスト:井上ジェイさん(以下井上)

 

上映終了後、会場からの拍手に迎えられ久保田麻琴さん、セイゲンさん、花俟良王さんが登壇。

 

久保田)

泣きそうになった人、手をあげて。泣いた人は?(会場 手を挙げる方多数)

ジョージ降りていましたね。すごかったです。

 

オノ)

全編通しでこの音で観るの、今のが初めてだった。

ライブみたいに、曲ごとに拍手しちゃった。

 

久保田)

ずっと拍手しっぱなしだった、私も。

たまにYoutubeで短いのを見かけて、こんなのあったんだって思っていただけで、こんなにしっかりした映画になっていたんだね。

セイゲンさん、これは音を触ったの?

 

オノ)

今日の上映のためだけに、4箇所くらいEQの設定を切り替えるプログラムを組みました。反射音を加えたり、本編を改竄するような調整は一切していないです。

 

久保田)

なんで今日、呼ばれたかなって思っていたんだけど。

隠れファンというわけじゃないんだけど、私のクラッシック・ロックのプレイリストに入ってる曲の中で一番曲数が多くてヘビロテなのがジョージ・ハリスンなの。

あんまり人に言っていないし、ロック好きってあまり人に言わないというのがあって(笑)

 

オノ)

久保田さんは、7/29に上映した音楽ドキュメンタリー映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』のライ・クーダーの話、実家が映画館だった話の続きも聞きたいし。ご自分でも映画も作っている。マスタリングもやるしミュージシャンで、あと外せないのは、細野晴臣さんとコラボレーション(※)している。音楽と映画とオーディオの企画「オーディオルーム 新文芸坐」にぴったりなんですよ。

(※ハリーとマックという細野晴臣さんと久保田麻琴さんのユニット。1999年に『Road to Louisiana』というアルバムを発表した)

 

久保田)

この映画の画面にも出ているジム・ケルトナーという人は、私の一番好きなドラマーの人で。22,3年前に細野さんと一緒にハリーとマックでアルバムをやった時に、何をやろうか全く決まっていないんだけれど、最初に出た言葉が「ドラムはケルトナーでいこうね」ということだったんです。ミュージシャンにすごく人気のあるドラマーで、いわゆるど真ん中の人っていうか。ロックロックしていないけれど、ロックの真ん中にいる人。ドラムはリンゴ・スターやチャーリー・ワッツだってNo1ドラマーだけど、細野さんが選ぶのはケルトナーなんですよ。

ケルトナーはディランのツアーとかもやっているし、ドラム・セッションマンで地味な人でスーパースターという感じじゃないんですけど。

 

オノ)

“ミュージシャンズ ミュージシャン”ですよね

 

久保田)

LAのコーディネーターに頼んできてもらったんだけれど、友達が来たような感覚の人でしたね。

クラプトンはね、75年の全国ツアーのオープニングを僕のかつてのバンド、夕焼け楽団がやらせていただいたんですよ。今日の映画みたいなコンサートを、スタージの横から、わぁっいいな〜って観ることができて。

 

花俟)

クラプトンさんとはコミュニケーションを取れたんですか?

 

久保田)

当時、クラプトンはまだムーディーな感じで、パティ・ボイドさんも一緒にいて、少し難しそうな感じでした。ただ、すごい繊細な人だっていうのはわかるんですよ。調子のいい時は前座の楽屋にまできてくれて「今日はみんな良かったな!」って入ってくるときもあって。

繊細な人っていうのは、その翌年にザ・バンドの『ラストワルツ』に彼がゲスト参加したときのロバートソンとクラプトンの激突というか。あの時の様子を見るとわかるんだけど、彼はすごいドキドキしていて、ソロを弾いている時にストラップが外れてギターを落としかけたりとかするんですよ。

マエストロにしてはものすごい優しい面があって、この映画もそうですよね。インタビューで、ジョージは喜ばないって知っているけど、自分がやりたいからってやってるって言っているあの様子が、スーパースターのミュージシャンにしては謙虚で、やっぱり繊細さがありますよね。

一緒にツアーした時は素晴らしいなと思ったし、今日も「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」の時のギターは、泣きそうになりますよね。あれは、クラプトンがジョージの曲でしか弾けないような演奏ですよね。

 

花俟)

久保田さんはジョージの曲もカバーしていますよね。

 

久保田)

「ヒア・カムズ・ザ・サン」ですね。ビートルズで一番好きな曲でね。『オール・シングス・マスト・パス』も好きなアルバムです。いい曲ばかりで「マイ・スウィート・ロード」もすごい良かったし。シャンカールをプロデュースした中でもすごい良い曲がありますよ、タイトルが出てこないけど。

今日は呼ばれて嬉しかったですよ。この映画とこれだけ間近で触れ合うことができて。

 

オノ)

久保田さんはミュージシャンとしてバンドをやりながら、マスタリングや映画のDCPまで作ったり、裏方も知り尽くしてる。家でこれ観ても、サブスクでスマホとかホームシアターでも見られるけど今日みたいな体験にはならないと思うんです。映画って、、誰と一緒に観るかも大事。今日みたいに拍手が出たりとか、そういう体験なんですよね。

「映画の半分は音だ」ってジョージ・ルーカスも言ってますけど。

 

久保田)

全くそう思いますよ。だって、映画から音を取っちゃったら何だかわからないじゃない。無声映画になっちゃう。ライブ映画ってちゃんとした音響がある場所で観ると、価値が何倍にもなりますよね。ロイヤル・アルバート・ホール、素晴らしいホールでしたね。最後の紙吹雪とか感動するよね。

今日ね、ここにジョージ専門家が来ているんですよ。カメラマンなんですけどね。

 

<ここで井上ジェイさんが登壇(以下井上)>

 

久保田)井上さんはカメラマンでビートルズの専門家なんです。ビートルズ関係の本、何冊くらい出しましたか?

 

井上)3冊ほど出しましたね。今ジョン・レノン本を制作中です。

 

久保田)

今日つくづく思ったのはビートルズも歌うまいんだけれど、イギリス人はほんとに歌がうまいな、と。前から不思議だったんだけれど、知らない人でも歌上手い人がいっぱい出てくるじゃないですか。知らなかったのはジョー・ブラウンって人。

 

井上)

娘さん、サム・ブラウンもうまかったですね。

 

久保田)

ジョー・ブラウンは、ビートルズが前座をやっていたってことは見かけが若いよね。「ヒア・カムズ・ザ・サン」を途中で知らない人が歌い出して、あれって思ったんだけれど、うまいから感動しちゃって。その人がジョー・ブラウンだったの。ローカルスターのままの人ですよね。日本ではあまり知られていないと思う。

 

オノ)

コンサート自体は2002年で、ジョージが亡くなって1年後にやっているんですよね。

 

久保田)そうだよね。井上さんはジョージのコンサートは見たことあるの?

 

井上)

来日コンサートは観ました。1991年だったかな。クラプトン・バンドで今日出演していたミュージシャンも出ていましたね。アンディ・フェアウェザー・ローとか。

 

久保田)

ギタリストもたくさん出ていたよね。トム・ペティとか亡くなった人も。

 

花俟)

ビリー・プレストンも、ラヴィ・シャンカールも。

 

オノ)

誰がこちら側にいて誰が向こう側にいるのかわからなくなってきますよね。息子のダニーさんはジョージそっくりでしたね。

 

久保田)

井上さんはビートルズの四人で一番誰が好き?

 

井上)

よく聞かれるんですけど、以前音楽評論家の松村雄策さんが、ジョンとポールとどちらが好きという質問には答えられないと話されていて。お父さんとお母さんどっちが好きと同じようなものだと。といいながら私は音楽的にはポールが好きなんです。

 

久保田)

そうなの。私は圧倒的にジョージだな。ジョージのギターもいいんだけど、歌が好きなんだよ。今日も「あー、ジョージの歌で聴きたいなー」って想いが湧いたよね。

先日、松本隆さんとのトークがあったんですね、京都で。彼は素晴らしいドラマーでもあるし、詞で勲章をもらうような人ですよね。そんな彼と詞の話をしていて、一番影響を受けたというか好きなのはビートルズだって言っていたのね。それまでのロックの詞はyou と I しかなかったけれど、ビートルズが三人称を取り入れたことが革命的で一番尊敬の対象と言っていましたね。

 

井上)

ボブ・ディランがノーベル賞を受賞しましたけれど、ジョンとポールにもあげたいなと思いますよね。そしてジョージにも。

 

久保田)

私的にはジョージびいきなんで。

 

花俟)

久保田さんはなぜそんなにジョージが好きなんですか?

 

久保田)

クラプトンも言っていましたよね。とにかくナイーブというか。日本語で一言でいうと侘び寂びじゃないですかね。曲調が好きなんですよ。それと彼の歌かな、もちろんギターもいいけれど。徹頭徹尾うまい人というのも好きだけれど、それ以上に心がこぼれ出る歌が好きなんですよ。トニー・ベネットとか、やっぱりジョージってそうなんですよね。

 

花俟)

「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」とか日本人に愛されていますよね。

 

久保田)

あぁ、ウェットなところはあるかもしれない。ジョン、ポールの両巨頭が世界的に目立ちすぎてしまって、ジョージも大変だったと思いますよ。

ビートルズのドキュメンタリー『ザ・ビートルズ:Get Back』で、彼が家から出てこなくなって、もうビートルズ辞めるって時もあったでしょう?わかるよね、気持ちが。

 

オノ)

ぼくはビートルズ詳しくないんですが、先週の『ベルリン天使の詩』の回も、パレスチナとイスラエル、ロシアとウクライナに1日も早く停戦してほしいので上映前DJタイムではジョン・レノンの「イマジン」かけました。

ジョージはインド音楽に目覚めてインドに行っちゃってね、シャンカールに繋がって・・高校生の頃は分からなかったけれど、今になるとよくわかる。宗教や哲学に行って、そこが大事で感情を伝える、それと繊細なところとかね。

 

久保田)

いわゆる西洋的な価値観だけじゃない所に彼はなんか救いというか、何かあるんじゃないかと思ったんだろうね。コズミックな部分があるよね。

 

オノ)

その感じが今日も出ていましたよね。

 

久保田)

井上さん、ジョージはどんなバックグラウンドの人なんですか?

 

井上)

ジョージは、アイリッシュですね。リバプールの対岸がちょうどアイルランドで。

 

久保田)

アイリッシュってシンガロングの文化があるから、今日も思ったんですけど、どのメロディも頭に入ってきて、歌いたくなるような歌ばっかりじゃないですか。歌い慣れてるというか、声を出して歌うことが習慣というか。

 

井上)

ジョンもポールもジョージも、子供の頃から教会で讃美歌を歌っているんでね。

ハーモニーもすぐにできる。

 

久保田)

元々グレート・ブリテンの人は歌う伝統があったと思うんだけれど、教会の中でも特にイギリス国教会、アングリカン・チャーチの人は歌でまとまるというのがあるみたいですよね。。みんな歌えますよね。

イギリス人が異常に歌がうまいのは羨ましいなと思いますね。

 

井上)

みんなでよく歌いますよね。サッカー場とかね。僕も好きな音楽のルーツを辿ると、アイルランドに行っちゃうような気がするんですよね。

 

久保田)

アメリカのカントリーもそうだしね。アイリッシュの人たちがイギリスの歌をアメリカに運んだのが素なので。それがまたアメリカの水兵によってリバプールに戻って。

 

井上)

だからビートルズが出てくるまでは、カントリーが主流だった。

 

久保田)

スキッフルとかもそうだしね。

 

花俟)

井上さんは、ジョージのことをどういうふうに捉えているんですか?

 

井上)

ビートルズに入るとどうしてもジョンとポールに目がいってしまうけれど、ビートルズの音楽を聴き込んでいくとジョージに惹かれる。ジョン・ポールから入ってジョージに行く。理由はわからないんですけど。

 

久保田)

クラプトンがうまく説明しているよね。珠玉のようなというか、曲の中に深い何かがあるんだよね。ジェフ・リンも言っていたでしょ。一緒に演奏してみると、学び曲の中に美味しい部分がたくさん潜んでいる。

 

花俟)

ジョージだから「オール・シングス・マスト・パス」みたいな壮絶な名曲が生まれるんですね。

井上さん、コンサートはどう観られましたか?

 

井上)

今日は2回目で。CDとDVDにもなっているんでね、知ってはいたけど、映画館であらためて観ると泣きそうになりますね。テレビの画面で観るのとは違う。コンサート感は映画で見るからこそ。ジョージの曲の良さももちろん、演っている人たちの演奏のうまさにびっくりしました。

 

オノ)

今回、渋谷で試写会で観て、この2002年の追悼ライブがライブCDとDVDにもなっていることは今の今まで知りませんでした。

 

久保田)

そういえば、クレジットに入ってるのを見つけたんだけど、レイ・クーパー。プロデューサーとしてもクレジットされていて、驚いちゃった。パーカッショニストってエネルギッシュな人が多いんだけれど、クレジットの最初に出てきてあれって思って。

 

井上)

ジョージが映画を何本か製作していたんで、その絡みでレイ・クーパーもいくつかプロデュースしてるんですね。

 

久保田)

あぁ、モンティ・パイソンとかね。レイ・クーパーは、パーカッショニストとしてはいろんな名盤に出ていますよね。エルトン・ジョンとかも。

 

井上)

ジョージの来日の時のエリック・クラプトン・バンドにも参加していました。

 

久保田)

ジョージは、色んな人と付き合える人だったんだね。いい例がトラヴェリング・ウィルベリーズだよね。ああ見えて意外とフレンドリーで、いろんな人と付き合いができていたってことですよね。そういうところも、いいなーって思いますね。

今日、この映画は初めて観たけど、ライブ映画としては名作だと思います。またここで上映して欲しいね。

​登壇者プロフィール

久保田麻琴(くぼた まこと)

裸のラリ-ズ他数々のバンドで演奏、海外での演奏や録音経験も豊富。浜田真理子の新作など多くのアーティストのプロデュースをてがけ、阿波踊りや岐阜県郡上の盆踊りなど日本の音楽の録音/CD制作も行う。 細野晴臣や、ライ・クーダー、レボン・ヘルムとも作品で共演。宮古島の古謡を題材とした映画 Sketches of Myahk の原案整音出演を担当、スイス ロカルノ国際映画祭ドキュメンタリー部門に正式招待。その後約3万人の観客動員。大友克洋の最新短編アニメ、火要鎮の音楽担当。

www.makotokubota.org

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オノ セイゲン

録音エンジニア、ミュージシャン。『真夏の夜のジャズ』2021版Blu-rayのマスタリング・エンジニア。 1978〜80音響ハウスで映写係り。以後フリーランスとして1983年公開の映画「戦場のメリークリスマス」サントラの録音をはじめ、渡辺貞夫、ビル・フリゼール、ジョン・ゾーン、 マイルス・デイヴィスなど多数のアーティストのプロジェクトに参加。1993年以来スイス、モントルー・ジャズ・フェスティヴァルに4回、アーティストとして出演している。最新の仕事はSACD『音色の彷彿 ジャズ、ボサ &リフレクションズ Vol.1 オノ セイゲンによる選曲&マスタリング』。

https://www.universal-music.co.jp/p/ucgu-9072/

https://www.saidera.co.jp/seigen.html

新文芸坐では、「BUNGEI-PHONIC SOUND SYSTEM」をダイレクトに調整し、極上の音響空間で映画を楽しめる“オノ セイゲン presents「オーディオルーム 新文芸坐」”をシリーズで開催。

次回は11月24(金)と29(水)、伝説となっている『ジャズ喫茶ベイシー Swiftyの譚詩(Ballad)』を上映。11月5日~11日(土)のジェームズ・ボンドもオノ セイゲンによる音響調整で上映中だ。

新文芸坐:https://www.shin-bungeiza.com 

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8/24(木)三弾 公開記念トークイベント報告レポートが到着!

和田唱さん(TRICERATOPS)x藤本国彦さんトークショーと“ジョージへの感謝上映”が盛況に行われました!

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“静かなるビートル”ジョージ・ハリスン生誕80周年を記念し、絶賛公開中の映画『コンサート・フォー・ジョージ』。日本での初劇場上映を記念した第3弾トーク・イベントが、8月24日、TOHOシネマズ シャンテにて開催されました。トーク・ゲストに、ミュージシャンとしての視点からビートルズの魅力を掘り下げ、現在NHK-FMで放送中の『ディスカバー・ビートルズII』のパーソナリティも務められているTRICERATOPSの和田唱さんと、書籍『ディスカバー・ビートルズ THE BOOK』(シンコーミュージック刊)の監修を担当されたビートルズ研究家の藤本国彦さんを迎え、“ジョージへの感謝上映”として、声出し拍手OKの応援上映というスペシャルな形での上映に多くの観客の方が参加されました。

 

本編上映中はポール・マッカートニーやリンゴ・スター他、出演アーティストの登場シーンには大きな歓声が、演奏の後には拍手、そして、曲に合わせての手拍子も起こる楽しさ溢れる上映回となりました。本編上映後、トーク・ゲストのTRICERATOPSの和田唱さんとビートルズ研究家の藤本国彦さんが登壇すると、ビートルズはもちろん、本作ををよく知るお二人のトークを楽しみに待っていた客席からは一層大きな拍手が起こり、和気藹々(あいあい 開く?)としたムードの中、対談がスタート。

 

試写を含めて劇場で4回ご覧になったという藤本さんと、DVDで度々鑑賞され、2003年旧日本青年館での特別試写以来の劇場鑑賞だったという和田さん。2003年当時の試写会には来日中のエリック・クラプトンとオリヴィア・ハリスンも試写会に参加していたことから「ファンだったので、映画どころではなくなってしまうのではと心配していたものの、始まったら映画に引き込まれて、エリックどころではなくなってしまって(笑)。でもエリックがいることも相まって特別な経験でした」という和田さんの思い出から対談はスタート。

劇場での改めての鑑賞に関して、和田さんからは「やはり、特に「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」が素晴らしい。「マイ・スウィート・ロード」あたりからこのフィルムが持つ一体感が増して、僕らも観客席にいるような感覚になっていきました。極めつけは「I’ll See You in My Dreams(夢で逢いましょう)」でしたね」と話されると、「エンディングの花吹雪、いいですよね」と藤本さんも相槌を打たれ、客席からも深い頷きがありました。続けて、「I’ll See You in My Dreams」をTRICERATOPSでカバーしたきっかけはこのコンサートですか、と藤本さんが尋ねると、「もちろんそうです。ジョー・ブラウンが演っているのを聞いて、改めて素敵な曲だなぁ、と思って。雰囲気がぴったりですよね」と和田さん。

 

本作の音楽監督を務めたエリック・クラプトンに関して、藤本さんより「クラプトンはジョージの弟分として、裏方に徹して、気も回しながら甲斐甲斐しく主催者を務めていて、そのあたりにもジョージへの想いの強さがでていますね」と語ると、和田さんも「この映画を観るとクラプトンが好きになりますよね。普段よりもよく笑っているんですよ。そのあたりも素敵だな」と話されました。また、ソロも控えめで「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」も前半はレコードに忠実にギターを弾くクラプトンに、ポールのピアノ、リンゴのドラムとレコーディングしたときのメンバー3人が揃っていることへの改めての驚きも語られました。

「ビートルズの二人、リンゴやポールが出てくるだけでオール・スター・バンドのようになりますね」と言う藤本さんに、「ビートルズの二人が持っている華は特別なものがありますね」と和田さん。「フォー・ユー・ブルー」でポールがリンゴに合図を送って、リンゴが一節を歌う場面なんかもいいですよね」と継ぎ、しばしポール談義に花が咲きました。

「モンティ・パイソンのハチャメチャなコメディーやいわゆるブラック・ユーモアからインド音楽や宗教的な荘厳さまで、ジョージらしい幅がありますよね」(藤本さん)「そうですよね。ロックもありで、最後は「夢で逢いましょう」という音楽的にミクスチャーなところも好きな所なんですよ」(和田さん)「そこもジョージだからこそですよね。ジョージが好きだった人たちがちゃんと声をかけられて集まっているのもわかります」(藤本さん)と、ジョージ不在のトリビュート・コンサートながら、様々な場面でジョージらしさを感じられるコンサートだったこともしみじみと語られました。

和田さんからの「ジョージの日本公演でもバックを支えた面々がいるのもいいですね。かつてジョージの曲を演奏している人たちがバックにいるから演奏もタイトでまとまっています」とのお話や、開催から21年経ち、トム・ペティやビリー・プレストン、ラヴィ・シャンカール、ゲイリー・ブルッカー、ジム・キャパルディなど、既に亡くなっているミュージシャンも多く、月日を感じるということや、ジョー・ブラウン、サム・ブラウンを始めとする出演ミュージシャンにまつわるお話など、本作をよく知るお二人ならではの様々なエピソードがテンポよく語られ、会場からの大きな拍手とともに30分のトーク・イベントは終了となりました。

​登壇者プロフィール

和田唱 (わだ しょう)

1975 年生まれ。1997 年メジャーデビューしたロックバンド、TRICERATOPS(トライセラトップス)のボーカル、 ギター。作詞作曲も担当。ポジティブなリリックとリフを基調とした楽曲、良質なメロディセンスとライブで培った 圧倒的な演奏力が、幅広い層から大きな評価を集めている。各アーティストへの作品提供も多数。2018 年か らソロ活動も開始し、2 枚のアルバムをリリース。今年 9 月からトライセラトップスで全国ツアーを行なう。また、 10 月から上演される「Musical のだめカンタービレ」の音楽を担当。アグレッシブな活動に、今後も大きな注目 を集めている。

※藤本国彦さんのプロフィールは第二弾トークイベント(こちらの下)をご覧ください

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8/3(木)第二弾トークイベント with 藤本国彦さんx本秀康さん
お二人のユーモアあふれるトークで和やかなイベントになりました!

8月3日(木)TOHOシネマズ シャンテの19時からの上映回の本編終了後に、ビートルズ研究家の藤本国彦さんとイラストレーター本秀康さんが本編の面白かったポイント、見応えあったところなどについてお話しくださいました。以下に当日の様子をレポートします。

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本編が終わると満席の会場からは拍手が沸き、藤本氏と本氏の登場により会場は一気に暖かい空気に包まれました。

 

試写を含めて大スクリーンでの鑑賞は3回目になるというお二人、「大画面で観ると迫力満点で、ロイヤル・アルバート・ホールにいるような感じになるのがいいですね」(藤本氏)、「音が良くて、拍手の臨場感もあって、間違えて曲終わりに拍手をしそうになる位でした」(本氏)と音・映像ともにリマスターされた本作を映画館でご覧になっての感想からスタート。

 

「まず出演アーティストがいいですよね」と藤本氏が語ると、「ジョージを感じられるし、これだけの人が集まるだけでもすごいのに、自分の持ち歌を歌わず、ジョージの曲だけを歌うというのはなかなかないこと」と本氏。2002年のコンサートを見るチャンスがあったという本氏は、「ジョージが出ていないことがわかっていたので、行かなかったんですがバカなことをしたな〜」と会場の笑いを誘いました。

 

ポール・マッカートニー、リンゴ・スターという元ビートルズのメンバー2人が参加している本作に関して「このコンサートで珍しいのは、ポールが脇役になってるところ」と藤本氏が語ると、その後話題はポールを中心に。

「ポールがジョージの曲を歌っているだけで泣ける」という本氏に、「脇役に徹しながらも、その存在感、声は唯一無二、大物感というよりも安心感を感じる」という藤本氏、続けて「癒し系かな?珍しく“慈愛”という言葉がポールに似合っていますね」と、再び会場の笑いを誘う場面も。

 

ポールとクラプトンが二人でハモる所が感動的(本氏)という「サムシング」に関しては、ポールのウクレレ弾き語りからスタートし、途中からバンド演奏に変わっていくアレンジに関して、このコンサートをきっかけにポールが自身のコンサートに取り入れた、というエピソードが藤本氏から語られました。

 

また、1971年の「バングラディシュ・コンサート」、1974年の北米ツアー、1987年のプリンス・トラスト、1991年の来日公演と数少ないジョージのソロ公演で歌われてきた「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」に関して「ジョージの公演では、ジョージの曲だと思って聞いていたんですけれど、ここでは『ホワイト・アルバム』に入っているビートルズの曲に聞こえるんですよ。ポールの頭のピアノだけでこんなに変わるのかと思う」と本氏が話すと、「その通りですね。リンゴもいますしね。ポールのピアノに加えて、クラプトンがレコードと同じソロを弾いているのも泣けますよね」と藤本氏もコメント、深く頷かれていました。

 

「インド音楽の厳かな感じが追悼コンサートにふさわしいし、モンティ・パイソンの笑いが入っているのもすごいし、超大物が集まってロックを演奏するというのも素晴らしい。すごく練られたたようで、ジョージがやってきたことを全部入れただけなんですよね。それですごくいい追悼コンサートになるっていうのがすごいですよね」本氏が語ると、「出しゃばる人がいないのもジョージらしくていいですね」と藤本氏。

 

他にも、ビートルズ、そしてジョージ・ハリスンに精通するお二人からときに笑いを交えた様々なエピソードが語られ、会場からの大きな拍手とともに30分のトークショーは終了となりました。

 

ジョージ・ハリスンを敬愛する豪華アーティストが一堂に介し、ジョージの残した名曲を演奏して追悼を捧げる本作。58歳という若さでなくなったジョージとほぼ同世代の出演アーティスト達の、ジョージへの思いが一つになり、まるで会場にジョージがいるような感覚が感動を呼ぶ本作、ぜひ劇場でご体験ください。

​登壇者プロフィール

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藤本国彦(ふじもと くにひこ) プロフィール

 

音楽情報誌『CDジャーナル』編集部(1991年~2011年)を経てフリーに。主にビートルズ関連書籍の編集・執筆やイベント・講座などを手がける。主な著作は『ビートルズ213曲全ガイド』『ゲット・バック・ネイキッド』『ジョン・レノン伝 1940-1980』『気がつけばビートルズ』『365日ビートルズ』。映画『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK‐The Touring Years』『ザ・ビートルズ:Get Back』『ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド』『ジョン・レノン~音楽で世界を変えた男の真実~』『ミスタームーンライト~1966 ザ・ビートルズ武道館公演 みんなで見た夢~』などの字幕監修/監修も担当。最新編著は『ディスカバー・ビートルズ THE BOOK』。相撲とカレーと猫好き。

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本秀康(もと ひでやす) プロフィール

 

1969年京都生まれ。イラストレーター/漫画家/7inchレコードレーベル「雷音レコード」主宰。著書に『MUSIC BOOK 本秀康音楽イラストレーション集』(Pヴァイン)、『レコスケくん』(ミュージック・マガジン)、『あげものブルース』(亜紀書房)、『ワイルドマウンテン』(小学館)、『たのしい人生 完全版』(青林工藝舎)などがある。

7.29 (土) 公開記念イベント with ピーター・バラカンさん 盛況でした🎉

公開記念イベント第一弾で、ピーター・バラカン氏が本作の見どころについてたっぷりとお話しくださいました。以下に、当日の様子をレポートします。

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公開を記念し、7月29日(土)19時の上映回後にピーター・バラカン氏をお招きしたトーク・イベントが開催されました。上映後、満員の会場から大きな拍手が起こる熱気の冷めない中ピーター・バラカン氏が登場。

本作に関しては2003年リリースのDVDでも度々鑑賞されていたというバラカン氏から、スクリーンでの初鑑賞に関して「ステージ上にはたくさんのミュージシャンが出ていますから、小さい画面で見ていると捉え切れないんですよね。今回初めて大きいスクリーンで観て、例えばギャリー・ブルッカー(プロコル・ハルム)がずっと出っ放しだったということに初めて気づきました。そういうディテイルが、すごく嬉しいですね」とのお話からスタート。

 

続いて、エリック・クラプトン、ポール・マッカートニー、リンゴ・スターなど多くの有名ミューシャンが登場する本作の中で、“日本ではあまり馴染みのないミュージシャンかもしれないですね”と本作のトリを務めるジョー・ブラウンに関してのお話に。ビートルズ“が”前座を務めた彼に関して、イギリスでは「ア・ピクチャー・オヴ・ユー」(1962年)というシングルが大ヒットし、バラカン氏の世代では知らない人がいないほどの人気で、バラカン氏もシングル盤を持っていたというエピソードや、前座を務めた当時はまだビートルズの人気に呼応して労働者階級が“かっこいい存在”となる前だったため、コックニー(ロンドンの労働者階級のアクセント)で話すジョー・ブラウンと、同じくリバプールの労働者階級出身だったビートルズはウマがあったのでは、というお話がありました。

また、ジョー・ブラウンもジョージも大のウクレレ好きだったため、「最後にああいうシーンで締めるのはとてもいいですね」とのお話もありました。

また、ジョー・ブラウンの娘サム・ブラウンとジュールズ・ホランドによるジョージ最後のレコーディング曲「ホース・トゥ・ザ・ウォーター」での“馬を水際に連れて行けても、無理やり水を飲ませる事はできない”、ということわざに由来するタイトルの曲の歌詞で「“ネガティヴな話題に集中しがちなメディアに、もっとポジティヴな話をしようよ”というジョージのメッセージが込められているとてもいい歌ですね。最後になって本気で思っていることをぶつけてきたな、という曲でしたね」と語られました。

 

本作で異彩を放つモンティ・パイソンに関しては、「(1969年にスタートした『空飛ぶモンティ・パイソン』は)笑いのタブーを全部取っ払った番組で、モンティ・パイソンは人を笑わせながら、画期的な社会的にも意義のあることをやっていった集団でした。その後のBBCの番組、イギリスという国がどんどん変わっていったんです。音楽の世界でビートルズが何もかも変えていったのと、ある意味同じような存在かもしれません」と当時の時代背景を含めて解説してくださいました。

 

他、先日対談されたパティ・ボイド、クラプトンとジョージの関係性の話や、マーク・マン、アンディ・フェアウェザー・ロー、アルバート・リーなどのギタリスト陣、レイ・クーパー、ジム・キャパルディ(元トラフィック)、ジム・ケルトナーなどのドラムズ陣、ギャリー・ブルッカー(プロコル・ハルム)や、既に他界したトム・ペティやビリー・プレストンなど、ステージに登場する錚々たるミュージシャンになど関しても、ピーター・バラカン氏ならではの豊富な知識と視点で語ってくださり、充実した約30分間のトークに客席からは大きな拍手が送られました。

 

登場する参加アーティストそれぞれのジョージへの思いが心を打つ本作を一層興味深いものにしてくださった本トーク・イベントの模様は、追ってご覧いただけるよう準備中です。ぜひ楽しみにお待ち下さい。

ピーター・バラカンさん プロフィール

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1951年ロンドン生まれ。

ロンドン大学日本語学科を卒業後、1974年に音楽出版社の著作権業務に就くため来日。

現在フリーのブロードキャスターとして活動、「バラカン・ビート」(インターFM)、「ウィークエンド・サンシャイン」(NHK-FM)、「ライフスタイル・ミュージアム」(東京FM)、「ジャパノロジー・プラス」(NHK BS1)などを担当。

著書に『ピーター・バラカン式英語発音ルール』(駒草出版)、『Taking Stock どうしても手放せない21世紀の愛聴盤』(駒草出版)、『ロックの英詞を読む〜世界を変える歌』(集英社インターナショナル)、『わが青春のサウンドトラック』(光文社文庫)、『ピーター・バラカン音楽日記』(集英社インターナショナル)、『魂(ソウル)のゆくえ』(アルテスパブリッシング)、『ラジオのこちら側』(岩波新書、電子書籍だけ)、『ぼくが愛するロック 名盤240』(講談社+α文庫、、電子書籍だけ)などがある。

2014年から小規模の都市型音楽フェスティヴァルLive Magic(https://www.livemagic.jp/ )、そして2021年からPeter Barakan’s Music Film Festival (https://pbmff.jp/) のキュレイターを務める。

ウェブサイトは https://peterbarakan.net/

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